質問に答えられないといけませんから

「あなたが抜群になれば説得力がある」 

稽古をはじめた頃、甲野先生に言われて、今でも言われ続けている言葉だ。 
プレッシャーにならないように、励ましの言葉として受け止めている(笑)
はじめた頃に比べれば大きく変わったと思うが、抜群とは思えない。 
評価はどうあれ稽古するのみですが、最近甲野先生が言う内容に変化があった。 
会話の中ではあったが、このように言われたのだ。 
「あなたも質問されたら答えられないといけませんから。」 

もちろんこの場合の質問への答えとは、言葉による説明だけではない。実践(実戦じゃないですよ)出来ないと特に初心者にはヒントにもならないおそれがある。 

私程度で”教える(質問に答える)”というのが良いのか悪いのか、正しいのか誤っているのかなどわかりようもないし、気にしてもしょうがない。 
気にすれば黙るしかないのだから、聞かれれば自分の理解の範囲で精一杯お答えすることになる。 

今まであまり気にしていなかったが、この言葉をきっかけに少し考えるようになった。 
武術を教えるというのは難しい。私が武術の他に取り組んでいる構造動作トレーニングのほうが、教えるという意味ではやりやすいかも知れない。 
もちろん、色々と動けた方が説得力が増すのはその通りだ。私が興味を持ったのは中村先生が見せたロールオーバーのインパクトの影響も少なくない。 
中村先生が解剖学的な見地から研究された構造動作理論は、本人の出来上がりのレベルにはそれほど左右されずに目指すべき方向を教えてくれる。この場合の”教える”は、同じ方向を向くように案内するという事だ。 

武術も同じように考えても良いとは思うが、私が質問する側だとしたら、説明も良いがやって見せて欲しい。あるいは体験させて貰いたいと思う。 
例えば『辰巳返し』は言葉でも説明出来る。 
・体幹と腕をつなげて丈夫な構造をつくる 
・丈夫な構造を保ったまま動く 
・相手を気にしなければそのように動ける 

細かいところを言うなら 
・腕だけで上げようとしない 
・腕をおいていかない 
・主に背中と股関節を使う 
・相手の肩口の方向に進む(飛行機が離陸するように) 

これらを甲野先生の説明を聞いて「?」だった人が、言葉だけ聞いてもわからないだろう。ちょっと説明を加えた程度の事しか言っていない。 
しかし、腕を押さえながら今確かに「丈夫な構造になっている」とか「腕だけであげようとしても駄目」ということを体感しながら聞くのでは情報量が桁違いになってくる。 
「百聞は一見に如かず」 
「百見は一触に如かず」(誰に聞いたか忘れましたが) 
これらを元に計算すれば一万倍違うことになる。 
納得してもらうには実践が必要というわけだ。 

というわけでどこまで出来るかはわかりませんが、講習会などで私を見つけたら、お気軽に声をかけて下さい! 
ちょっとだけがんばって教えた後で、中島先生の講習会などご質問に沿ったお勧めの講座をご紹介します(笑) 

手裏剣の説明が出来るようになると良いなぁ(ちょっと聞かれる場面が想像出来ませんが)。 
それから掴まない柔道技も。 

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