ある日の柔道研究稽古(その2)

続き 

甲野先生の動きにある「間(ま)」については早々に稽古をあきらめた。 
甲野先生の「間(ま)」に興味を持った人には申し訳ないですが、ここから先は私中心の稽古話です。 

「間(ま)」については、城間流沖縄拳法のセミナーで稽古法も教わったが、この日の甲野先生のように使うのは容易ではない。 
そもそもそれ以前に疎かにしてはならない事がたくさんあるのだ。 

さて、この日の稽古はまだ続く。 

先生が冒頭で私を紹介していただいた時に、「『辰巳返し』が出来る人」という形で紹介していただいたせいもあって、色々な質問が私のところにやってきた。 
その中で当然、「辰巳返しってどうやるのですか?」と言われたので、お答えしたところ私が教えた方々がその場で出来るようになってしまった。 
もちろん、私が甲野先生の『辰巳返し』を再現出来ないのと同様、動きには精度というものがあるが、それでも教えたその場でそれなりに出来るようになったのだ。 
先日甲野先生に言われた言葉を早くも実践する場が訪れたわけだが、これは我ながら教え方が良かったのだと思う(えっへん)。 
質問を受けて答える(教える)ときに気をつけている事があるのだけれど、そのことはまた別の機会に書くことにしよう。 

質問を受けてばかりではいられない、私も課題を抱えて参加しているのだ。 
脳内稽古中の三船久蔵十段の動きを、甲野先生との稽古で身に付いた感覚をもとに研究したかった。しかもこの日の稽古相手は現役バリバリの柔道家である。 
このような機会はめったにあるものではない。もう無いかもしれない。とにかく今を逃してはならない。 
「三船十段の『空気投げ』を動画を見て研究しているんです。」から始まった私と柔道家の方々との研究稽古。 
取りあえず脳内稽古の通りにかけさせていただいた。 
速度はそれほど早くせずに、動きをトレースする。 
っと、崩れる。 
少なくとも間違えではなかったようだ。 
柔道家の方からも「いまのはかかっています。」と言っていただいたので間違いない。 
楽しい。 
研究稽古したその場で柔道家の感想をいただけるのだ。 
楽しくないわけがない。 
動けている時に感じたのが、相手と繋がっている状態だ。 
自分の動きと相手の動きが一致してくる。すると体捌きで投げる『空気投げ』の動きに入れるようになる。 
やや直前に稽古した韓氏意拳の影響が強いと思うが、これまで甲野先生や中島先生のもとで稽古していた感覚が助けになっているのは間違いない。稽古やブログを通じて様々な方からアドバイスをいただいたのも大きい。 
一緒に組ませていただいた相手の方も「繋がる」感覚を共有できて動きになっていた。 

その後も崩しに必要な動きの範囲や、相手とつながる状態などをお互いに確認した。 
・自分勝手な動きで投げようとすると力が必要になる 
・崩しの範囲を超えると相手は復活する 

『羽織を羽織る(つもりの)投げ』も、どうそこまで行くかは柔道家にまかせるとして、有効な働きがあることが確認できた。相手の方がやるのを受けてわかったことだが、慎重になり過ぎて相手とのつながりが切れてしまうと何も起こらない。丁寧に、というのはそーっと動くのではない。相手との繋がり(=羽織)を感じて投げの形に入る。するといつの間にか投げられている。 

また、片足立ちからの足払いの検証。 
これは自分で立っている状態をキープしながら相手の足に触れると、思わぬ威力が出るというものだ。 

膝裏を刈ると相手が崩れやすくなることが確認できた(小内刈りに近くなる?)。 
畳の上に裸足でいる場合、摩擦が大きく、この単純な形では相手が動かないのだ。 
私の手から動きの情報が伝わってこない状態で、突然足を刈られる感覚に驚いていただいて、思っていた以上に有効だった。 
さらに立っている側の足を居着かないようにした状態で刈るとさらに有効でほぼ足の接触だけでそのまま後方に崩れる事も確認できた。 
稽古法。これは以前韓氏意拳のU田さんにやってもらった遊びが元になっている感覚だ。 
相手の横に立ち片足で立つ。浮かせた足で相手の膝裏あたりを上からしたになぞるようにして触れる。 
このとき片足で立つ側は"決して"相手に寄りかからない。 
すると相手は予想以上の重みを感じて、膝から崩れる。 
触れると書いたのは、見た目には踏むように見えるのだけれど、踏みに行くと寄りかかってしまうからだ。 
ほんの少しでも寄りかかってしまうと相手には何も起こらない。それどころか自分が崩れてしまう。 

これはさすがにいきなり出来る形ではないが、それでもやったなりの効果は出るようだ。 

最後の方でT大の学生さんから質問を受けた。 
「もっと試合のように技をかけにいったらどうなりますかね?」 
検証用に手加減した状態で技をかけているが、そうでなければどうなるのか? 
という質問であった。 
「私で良ければ、ちょっとどうなるか試してみましょう!」と提案した。 
相手の方も快く応じてくれて、乱取り稽古という形で研究稽古を行うことになった。 

続く



空気投げ研究稽古
ある日の柔道稽古(その1)
ある日の柔道稽古(その2)
ある日の柔道稽古(その3)

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