力が入りすぎていたら『謙譲の美徳』

東京武道館で行われた甲野先生のセミナーに遅れて参加した。

最近は甲野先生から『辰巳返し』と『謙譲の美徳』が教えられる人と紹介されることが多くなっている。
この日も紹介を受けて、興味を持った方と一緒に練習をさせていただいた。

『辰巳返し』も『謙譲の美徳』も興味を持っていただけて、
やり方を伝えるとそれなりに体験してもらえるようになっている。

この日はアートの世界で壁にぶつかっているという方にその悩みの相談を受けた。
練習すれば絵の技術は上がるのだが、いい絵になるかというとそれは違うという。
この方の師匠が言うには力が入りすぎているのだという。
ここに壁を感じて悩まれているそうだ。

わたしは、この方ほど頑張ったことがないのでわたしごときができるアドバイスはない、
と、はっきり申し上げたうえで、面白いと思うので『謙譲の美徳』を受けてもらった。
相手が吹き飛ぶパンチなどでほかの方が同じように(それも上手に)やられているのを
見たことがあるが、『謙譲の美徳』の特徴的なところは感覚を逆転させるところにある。
自分が後ろに跳ね飛ばされるように触れると、相手が代わりにはね跳ぶ。
自分が引き付けられるように腕を動かすと、相手が代わりにこちらに来てくれる。
力の感覚は相手をどうにかしようとしたときに比べると、全く逆のことをやろうとして、
結果が当初の狙い通りになるところが面白い。

ヒントになったかどうかわからないが、力が入りすぎているという師匠の指摘に対して、

これまでと違うやり方で思いもよらぬ効果を得られることもあるのだと実感してもらえたと思う。

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