雀鷹舎稽古会岡田さん主催で英国松濤會原田満典先生の遺された空手を伝えるベルナルド夫妻(フランス)に教わる機会を得た。10年前、7年前に一回ずつ、教わるのは今回で3回目。
稽古中の説明は全て英語だったので聞いたままの英単語も入れながら書いていこう。
今回も必ず両手が働く点についての説明があり、この説明ではspear槍、bou棒※弓のbowではなくstickの棒をbouと言われていた。sword刀も同じでどれも片手だけで働くのではないと言う説明をされていた。突きや払いを行わない方の手が何もしていないとゾンビzombieと言って注意を受ける。
十手の形は棒を持ってやれば自然とあの形になるというような説明をされていたと思う。
この型の中でも登場するが突きを出した後肘を落とす動作では拳を引かずに体の操作で肘を落とす。拳は握るがそれ以外は自由に動く状態であるflexible必要がある。
拳の位置を変えずに肘を落とすため、突き出した側の体を捻って前に出る必要がある。それでもより落とそうとすると拳を手前に引くことになってまうので、体全体を前に移動させて強い構造を持った姿勢を保つ。
練習では下半身は騎馬立ちで固定し、上半身を捻ってtwist腕を運ぶ。横に体を捻る動作では膝の使い方を誤りやすく、膝関節に横からの負荷が掛かってしまうので、これを避ける意味でも上半身で腕を運ぶのだと説明された。
両腕を前に出して左右に受ける形では両腕を円の上をcircle回すように動かす。これを後ろに下がる動作で行う。同じ方向に受ける場合は円周をなぞるように動かし続ける。左右に受けを切り替える場合も同じ円周上で右回り、左回りに切り替える。
同様の動作を相手の突きに合わせて行う。
突きを受ける場合、腕の動きはサンチンの形のように相手の突きに巻き付くようにして受けた後、下方向に沈める。初めから横方向に受けようとすると重心が横に飛び出して姿勢が崩れやすく、力がぶつかってしまうようだ。
息を吐き続けるbreathe。これは動作を区切らない、途切らせないということ。突きでも払いでも同じで、一回の動作の終わりを決めて動かず、突きなら一発目が当たらなければ動作を止めずに二発目を入れられるように呼吸を止めずに動く。
この途切らせない意識は対人で動く場合にも重要で、相手と同調synchronizeして動き、下がりながら突きを捌く練習を行う。同調しながら突きが前へ、受けが後ろに接触なしに進むやり方と、3歩目など決めたタイミングで払う、受ける稽古がある。これはおそらく段階的に、同調だけ、同調して受けると稽古を進めるといいのだろう。
原田先生は相手に突きの動作をやらせて、それをみて距離を掴むと、その後相手の技を(触れずに)止めて見せたりしていたそう。
同調synchronizeをリズムという言葉でも説明されていた。相手が前にでながら突いてくるのに対して、リズムを合わせて下がりながら両手を手刀にして上から下へ、富士山を描くように上げ下ろしを行う。これも続いて3回目で払う約束で練習する。
twist squeeze
squeezeは拳からエネルギーを伝える際に身体が前に行くのではなく、絞り出すように体を使い、沈み込む動作とともに前方向への力が加わり相手を崩す作用が生じる。
この日教わりながら先生の体を触るように指示を受けたり、ある状態でまだ動けるか?という確認をしてみせたり、ある原則にしたがっているか確認する場面が多くあった。
先生が私の腕をしっかり握りながらも上腕、前腕はふにゃふにゃのままいつでも動ける状態にあること。腕を動かす際は縮める側の筋肉が働けばよく、力んでカチカチにしてしまえばどちらにも動けなくなってしまう。硬くて動けない塊は、強いとは言わないと言うことだろう。
突きを出して相手が受け止めた状態で前側の足が動けるかどうか。初心者の場合は前屈立で練習しても構わないが、騎馬立ちや不動立ちで左右50%ずつ負荷を分散できると突きの後でもすぐに前の足を動かして体勢を変えることができる。
息を吐く動作ではお腹を膨らませつづけていること。
両拳を前に突き出し拳の横から手で抑えられた状態で横を向いて相手を崩す練習。力の方向は前だが、相手に寄りかかるのではなく拳がより遠くに伸びるようにし続けながら体を捻って横を向く。
前に突き出した両手で棒を持ち、棒の先端を手のひらで押さえた形から同様に動くと相手が崩れて動く。これも棒がなるべく遠くにある円周上を回るように行う。
抜塞の形を披露していただき、動画に残した。
この形にも登場するが、突きを出してから肘を落とす動きは手を手前に引きながら落とすのではなく、上半身のコントロールで拳を前に出したまま肘を落とす。
ベルナルド先生は私が柔道をやっていることも覚えていてくださり、何か見せて欲しいとのリクエストを受けて、岡田さんとも研究した五の形をお見せしたところ、たいへん関心を持ってくださり、スマホを取り出して動画を撮られていた。
特に形を行う際の姿勢に着目され、前腕を真っ直ぐに立てて見せながら、この姿勢が重要なのだといったことを話されていたと思う。
その後、食事もご一緒させていただき、日光や金沢を回って、ラーメンを食べた話などを聞かせていただいた。
この日の感想で岡田さんが言われていたが、記念式典で原田満典先生と会話した際に握らせてもらった腕の感触と、稽古中に握った私の腕の感触が同じだったとの事。これは原田先生からベルナルド先生、そして岡田さんと私に身体運用が伝わっていることが確認できたとも言える。
「See you again!」とお互いに再会を約束した。
またお会いできる日までに稽古を進めておこう。
それと英語の勉強も続けよう。
前回お会いしてから英語の勉強を続けていたおかげか今回は稽古で使った英会話はほとんど聞き取れて理解が出来た。普段英語で話す機会は全くないので英会話は前回ベルナルド先生と会話して以来だったと思う。
稽古も英語も『継続は力なり』を実感した機会でもあった。
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