稽古日誌名古屋特別編「その5柔道研究稽古」

最近は甲野先生の技の内容よりも私自身の稽古の話が多いのですが、稽古メモということでご容赦ください。

2日目、Y柔道部との柔道研究稽古。
この日は大阪からD島さん、関東からK磯さんも合流。
甲野先生から「サラリーマンをしつつ稽古熱心な人と言えば、東のたいさん、西のD島さん。」と言われたが、D島さんは稽古好きが顔に書いてあるような方。大阪でお会いして以来だったが、まさか再会が名古屋になるとは!可笑しくて笑ってしまった。

K元監督は今は独立に向けて準備中。治療院兼道場を建てられるそう。ここではK院長と書くことにする。
GW中という事もあって部員のほとんどが帰省しているなか集まった方々と、現役国体選手Kさんを加えたメンバーでの柔道研究稽古が始まった

『虎ひしぎ』
柔道には直接関係ないが、最新の発見ということで実際に階段を使って実演。
この動きをする甲野先生は猫科の動物のようだ。

『手の内』
旋段の手、鶴翔の手、虎ひしぎ、親指の背、、、手の指が全身に与える影響を様々な形で実践しながら、また実際にしてもらいながら説明。
部員の方々も自分で動いておきながらあまりの違いにそれでも半信半疑と言った表情を見せる。

各自で身体が持つ可能性を体験してもらったあとは、柔道に近い形での技の研究だ。

この日も時間をオーバーして続くほど色々とあったが、私自身が身をもって驚いたのは『屏風座り』の効果だった。
甲野先生の講座でも「柔道技をかけようとするところに『屏風座り』で待ち構えていると逆に相手を振り回すかあるいは投げることが出来る。」という効果を紹介されていたが、実際に柔道家に技をかけてもらってどうなるかというのは自分自身で検証する機会がなかった。

それをこの機会にやらせていただいたのだ。
現役国体選手のKさんとお互いにやってみるとその効果は絶大と言って良いだろう。驚くほど技にかかりにくくなる。
面白いのは技にかけられた時で、掛かりにくくなるのもそうだが、やられながら全く心が動じることなく自分が投げられる過程を観察することが出来るようになる所だ。観察する余裕があるので、冷静に返し技をかけることが出来るのだ。
これ程の効果を体験できるとは思わなかった。

『乱取り風』
そのKさんと『屏風座り』の効果を相手がどのような技をかけてくるかわからない条件で検証した。
足技がとんできても容易には崩されない。投げ技にも耐えられる。
投げられた時もそのまま隅返しに入ることが出来る。
心と身体の余裕がまるで違うのだ。
現役の国体選手であるKさんといわば乱取りのような形で、技にかからずにいられるというのは私からしたら異常事態のような出来事だ。さらにはやられながら隅返しに入れる心と身体の余裕が生まれるというのもちょっと考えられない。
我々の練習風景が目に入った甲野先生も笑いながらこの光景に驚かれていた様子。
この効果はもちろんKさんにもあったのだけれど、実際に相手を前にして『屏風座り』の格好をする気持ちの切り替えが難しいとの感想だった。それほど一見無防備なのだ。
それならばと『屏風座り』のままこちらからも技に入れる状態を試すが、これがまた驚きの効果だった。
技の一つ一つが重くなる。

その後、合気道経験のある部員さんや柔道6段のK院長とも検証したが横で見ていたK磯さんが驚くほど、粘ることが出来た。
しかし後でK磯さんとK院長がやっているのを見たら、K院長が私の時とは大違いの激しい攻めをされていたので、調子に乗るのは早いようですが。
それでもそのK院長から「あれだけやって、柔らかいから良いですね。」と言っていただけた。
「柔らかい」という感想は普段の稽古がそのまま出せたということなのでこれは嬉しい。


K磯さんとやった中で面白かったのが『組む』形での重みのコントロール。
手裏剣で剣に身体の重みを乗せる方法から、組んだ相手に重みをかけ続けるというのを考えていたが、K磯さんからまさにその組み方と言えるものを紹介していただいた
近いのは韓氏意拳の形体訓練にあるドンチーの感じ。
面白かったのは、相手に重さをかけるばかりではなく、浮かせてしまうこともドンチーに通じる動きで出来るようになる。
これを組み合わせると組んでいる間じゅう重かったり浮かされて落ち着かなかったりするので、やられると嫌な感じだ。

K磯さんと対『屏風座り』の動きを検討した。お互いに『屏風座り』になるとどうなるかというもの。
これも面白かった。

D島さんからは『虎ひしぎ』での組み方を紹介していただいた。
相手の衿、袖を小指が輪で引っ掻けるように掴み、空いた人差し指と親指で『虎ひしぎ』をする。
これで足払いをやると受けてからは足が棒のように硬く感じる。
棒で払われるので痛い(笑)

このD島さんと甲野先生が『正面の斬り』の形で稽古しているのを見ていたら、「たいさん、D島さんも強力ですからやってごらんなさい。」とD島さんと稽古することに。
油断したわけではないが受けるつもりで入るとこちらがよろめく程の圧力。
ではと、こちらも最新の『大和屏風』で構え直すと今度はこちらが押し気味にいける。
それをみた甲野先生が驚いたように「おや、たいさんどうしましたか。」と言うので今度は先生に受けていただくと、「これは、変わりましたね。」との評価をいただいた。
その後で「そうなると今度はこちらも。」と最新の『浮木之腿』で来られると、大きく崩されるまではいかないが、身体ごと一瞬宙に浮かされる。
最新の動きを引き出すところまで動けたのは嬉しかった。

『浮木の腿』
その『浮木之腿』をK磯さんと稽古した。
サッカーでリードしているチームが、時間稼ぎにボールキープする場面で相手を身体ごとどかしてしまう場面にも有効なのだけれど、これはコーナーキックやバスケットボールなどでのポジション争いにそのまま活用できる。
相手をどかすだけならば『辰巳返し』の身体使いでも可能だが、身体ごと場所を奪うような動きが『浮木之腿』の特徴である。
色々と試していると“足をよせる”動きが重要なようだった。『向かえ身』だ。


名古屋入りしてからのどれもこれもが刺激的な稽古で本当に行って良かった。
甲野先生はじめ、稽古してくださった皆様ありがとうございました!

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