松聲館技法レポート(最新技速報)

動画撮影のつもりであったが、甲野先生とマンツーマンでの稽古となった。

厳しい受けを要求される日だった。
「とにかく技にかからないように対応して。」とのご依頼。
終始、全てを尽くして対応させていただいた。

「『クラック』の次がありそうなんだよね。」から始まった稽古。
前回は『割れて戻る』と『手裏剣をなるべく短い準備で打つ』というものだった。

最初の稽古は棒手裏剣。
「あなたがどれほど打てるようになったか。大きいのは練習してないでしょ。」
大型棒手裏剣の打ち方をあらためて教えていただいた。
普段稽古している手裏剣とは重さが違う。
先生が言うには、重い方が打ちやすいらしい。自転車よりも大型バイクの方がスピードが出た際の直進安定性が増すが、そういう事だろうと思われる。

持ち方。
人差し指の腹で手裏剣の峰を感じるように添える。
中指は中央の膨らみよりも剣先側に置く。
薬指、小指を引っ掛け、親指で上から軽く押さえる。

何度か試してわかってきたが、甲野先生が言うには身体全体の加減で打てるようになってくると良いとのこと。
また、手のひらに重さを感じて打つという感覚もこれまで練習した大きさの手裏剣と通ずるところがある。
重さが乗った剣が丸太に刺さると真っ直ぐ引き抜こうとしても抜けない。
剣で的に切り込みを入れるようにしながら抜く必要がある。
贅沢にもお手本を間近で拝見しながら暫く練習させていただいた。
この経験は大きな財産になる。そのためには上達しなくては。

このような貴重な体験をさせていただけたのには、先日先生にお渡しした名刺に『松聲館技法研究員』と肩書きを載せた事にも起因しているだろう。
環境が変われば自分が変わる。自分が変われば世界が変わる。
また少し変わるかもしれない。さて、私の事を書き過ぎてしまった。


先生のお手本は袈裟斬りによる打法。
左右のぶれはもちろん、上下のぶれを無くすことが出来る打ち方だとのこと。
これに今は予備動作をなるべく少なくなるように打たれている。
下からの打法も見せていただいた。
さらに下から打つ際に、手を手裏剣に被せたまま放つ打法。不思議な飛びかただ。

手裏剣の技法について、語り伝えられている決まり文句のようなものがあるらしい。
2つほど紹介していただいたが見事に覚えられない。
他にも20以上あるらしい。

「ではやりましょうか」
で始まったいつもの形式での稽古。
まさか今日も大きな変化を体験することになるとは。
キーワードは『内観』。
先生の変化の予感は『内観』によるものだったようだ。

最初に出てきたのは「ちょっとだけ動く。」を表した「火花」。「パチッ」とはじける程度だけ動くというもの。
合わせて重要だと言われていたのは「いかに気にしないで動けるか。」ということ。
身体のなかに火花がたくさん散っているようだった。途中、火花を小さくすれば良いとも。
これで受けた『浪之下』『払えない突き』ともに止められない。
単にちょっとだけ動くのではない。そこに気配が感じられないことと、ちょっとの動きに身体全体が参加しているから止められないのだ。

さらに気にしないで動くために甲野先生が行った稽古は、『浪之下』の形で腕を持たれた状態で手裏剣を打つというもの。
手裏剣という微妙な動きを必要とする動作のなかで、気にしないまま動こうと言うのだ。
実際、油断なく腕を掴んでいて感じられたのは打つ瞬間、気配の消える様子。それだけではなく、実際に止めることが出来ないまま動かれてしまうのだ。
正確に言えば、止めようと思うことが出来ないまま動かれてしまう。
何度か繰り返したあと、『手裏剣を打っているつもりで。』という形に変わり、それが『抜刀をするつもりで。』という形に変化した。
特にこの『抜刀をするつもりで。』でやられた『斬込み入身』は、これまでにない強力な作用で、止めにいったこちらの腕が痛くてたまらない。
この抜刀の形も左右の手の動きの関係で、効果の程が大きく変わるのだが、これも先生の『内観』で探った結果が具体的な身体の動きとして現れている。
単なるイメージと『内観』で異なるのは、甲野先生が実際に動ける身体で『内観』したからこその、この効果だということだ。
動けない身体で抜刀をイメージしても、同じ効果は得られない。
その証拠に、甲野先生が抜刀をやらない左手で抜刀の形を『内観』した場合と、右手で『内観』した場合では明らかに後者の威力のほうが勝っていた。

さらに面白いのは(一方で困ったことには)、もともとが『内観』から来ているので実際に抜刀の形で動いたあと、再び『内観』に戻っていくというところ。
稽古しているほうからすれば、稽古の手掛かりが現れたと思ったら消えていってしまうということになる。
そうなると言われなければ『抜刀しながら動いている』とはわからない。
ここは松聲館技法研究員として、記録しておくべきだろう。

それにしても変化した後の『斬込み入身』の重さはきつかった。

このあとまた棒手裏剣を練習させていただいて、また少し感触を掴むことが出来た。
ハマる。
また、江崎氏作成の小型手裏剣を打たせていただいた。
こちらはいつもの感触でずいぶん打ちやすかったが、重さに関して言えば大型手裏剣の後だとかなり軽く感じた。 
ちょっと不安に思えるほどで、人間の感覚とはこうも簡単に変わるのかと面白かった。

稽古ではありませんが、、、
野元印のスズメバチの焼酎漬の後に甲野先生が(飲まないので何年もそのままにしていた)ナポレオンを入れて作成した、甲野印のスズメバチのナポレオン漬。
お猪口一杯でカッカとあたたまった。
あれほど強いお酒を飲んだのは10年以上ぶりだったか。
なんだかパワーがみなぎってきた気がして雨のなか駅まで小走りで帰った、お酒も稽古も濃かった日。

ちなみにこのリポートもスズメバチパワーのおかげか、家に着く前に一気に書き上げてしまった(公開が遅くなってしまいましたが、、)。

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