甲野善紀『音楽家講座』

新宿では最後の甲野善紀先生による音楽家講座に参加した。


演奏者に対する甲野先生のアドバイスはいつもの講座で聞くものとは違う。
姿勢や動作など、体の状態に直接働きかけるアドバイスもあるが、心の状態から体に働きかけるアドバイスが目立った。
イメージを先に伝えてから、そのときの体の状態を説明する。
甲野先生は相手を見て伝え方を変えられているようで、芸術家はイメージを伝えられるとそれだけでピンと来る人も少なくないようだ。


この日アドバイスをうけた方々の楽器は次のようなものだったが、それぞれの方の音がその場で変化していた。
これも音楽家講座の面白いところで、技の効きは相手によるので変化の度合いが分かりにくいが、楽器ある意味ごまかしが効かないので、非常に分かりやすくビフォーアフターを確認することが出来る。
体を楽器にして演奏するという言葉を聞いたことがあるが、人によっては驚くほど音が変わるので、まさにその通りなのだと納得出来た。



重心側から動く『浮木の腿』、相手に譲ろうとすると相手が譲ってくれる『謙譲の美徳』、腰の状態を寝かす、起こす、反るに変化させる動き『山を潰すからの展開(名称なし)』なども実演し、主催者の白川さんからのリクエストで最後に抜刀を披露するなど、盛り沢山で充実した講座になった。


音楽家講座そのものは今後も場所を変えて継続されるので、また是非参加したい。


この日アドバイスを受けていた方々の楽器。
・アコーディオン
・津軽三味線
・トランペット
・鍵盤ハーモニカ
・フルート



『謙譲の美徳』の説明では、甲野先生から声がかかって、私が実演した。
そのため後から参加者の方に「あれはいつでも連続で使えるのですか?」と質問を受けた。
講座中だったので結論だけ答えて終わったが、興味を持たれていたようだったので詳しくお伝えしたかった。
懇親会で機会があるかと思ったが、残念ながら参加されていなかったので、読んでいないと思うけれどここにもう少しかいておこうと思う。


質問:『謙譲の美徳』はいつでも連続で使えるか?
回答:『謙譲の美徳』はいつでも連続で使える。


補足:『謙譲の美徳』の説明。
ビリヤードで打った手球が他の球に当たって止まり、当てられた球だけ動く原理と(たぶん)同じ。
人がやる場合、接触した相手に自分が向かっている場所を譲ろうとすると導き出される。
連続で行う場合、触れた相手をその場にある壁のように思って、押す(壁なので押した自分が後ろに跳ばされると思って押す)。


応用:押す動きだけでなく、引く動きや上下、左右の方向にも『謙譲の美徳』は応用できる。どの方向に働かせる場合でも共通するのは、『相手に場所を譲ろうとする』事。


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