甲野善紀著『神技の系譜』

八重州ブックセンターでおこなわれた、甲野善紀著『神技の系譜』出版記念対談「甲野善紀×北川貴英」に参加した。

この本は北川さんが編集者のSさんに企画を発案してから出版まで実に3年を費やした、甲野先生(とSさん)の苦労がつまった一冊である。

わたしも先生からこの本を執筆中だと言われる度に「早く読みたい」と言い続けていたので、影の功労者(自称)だと思っている。


「とんでもない達人が実在した。」
「とても信じられないような技があった。」



そうに違いないと思うか、思わないか。
実際にどうであっても現在の生活に影響はほとんどないだろう。
しかし、稽古する上では、大きな違いになる。
甲野先生がまさにそれで、この本に書かれているような動きを、あるものと思って、体現すべく稽古に取り組まれているからこそ、技がどこまでも進展していく。


武術ならもちろんだが、そうでないものに取り組んでいるひとでも、一度この本を通じて、古の達人技を少しでも感じて欲しい。
どれも想像ではなく、甲野先生が武術研究家としてまとめた数々の貴重な資料をもとに研究した内容で、セミナーで聞いていた話からさらに踏み込んだ内容になっている。


また、原典を全文引用紹介するなど、武術関連の資料としても大変貴重なものになっている。


それからもうひとつ、今の世にも私のような凡人から見れば達人と思える人が実在している。
もちろん甲野先生もその一人だが、甲野先生でなくてもいい。是非とも探しだして、その技を体験して欲しい。
その上で「昔の達人と呼ばれる人の技のレベルを体育館の天井の高さとするならば、いまの私は点字ブロック程度。」という甲野先生の言葉をどきどき思いおこしながら稽古してみると、これまでとは違った世界をあるものとして想像できるようになるかもしれない。



対談北川さんが甲野先生に話を振って、甲野先生がそれにこたえるという流れだったが、普段は稽古している甲野先生とばかり接していたせいか、あれほどたくさん話をしていて、しかもその内容が武術史的にも貴重なものばかりというのは、講義中心の形式で行われる池袋コミュニティカレッジの講座でも見ていない。

打ち上げにも参加させていただいたが、そこでもまだまだ話が尽きない。
ちょっと本にできるのかわからない話もたくさんあったように感じたが、もう第2弾への期待が膨らんでしまう。




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