空気投げで紐解く投げ技

空気投げの正式名称は『隅落』、れっきとした柔道技として公式に認められている。
やり方もネットで検索すれば図解で出てくるため、私がこの技を取り上げて研究しているのを(なんでわざわざ?)と思う人もいるかもしれない。
実際、『隅落』の手順を読んでみても特別なことは書いていない。それは三船十段の著書をみても同じである。

しかし三船十段が実際に『空気投げ』をかけている映像を観ると特別な技にみえる。
これは何故だろうか?
手順をなぞっただけでは精妙な技の仕組みを理解できるものではない。ここに研究の面白さがある。

空気投げは三船久蔵十段が理想を追い求めて開発した投げ技である。
空気投げを理解するとは、投げ技の根本原理を理解することに他ならない。

技を理解する、技が完成するとはどういう状態か?
これはやる本人が目標をどこに置くかということ、探求心が尽きるのはどこなのかということだ。
誰かを投げられるようになったら完成だとしたら、そこで空気投げの進展は終わりである。
探求し続ける限り技の完成は見られないが、進展にも終わりはない。
わたしの空気投げ研究が終わることはないのである。

空気投げの研究課程では、単に手順を追うのではなく、これまで教わった様々な体の仕組みや武術的な動きを試して検証する。
空気投げの手順を逆に追ってみたり、自分の体を使ってどうなったら三船十段の動画のように投げられそうかと様々な体勢を確認したりして、少しずつ技の仕組みを解き明かしていくのだ。
時には空気投げから離れて、いっけん無関係の動きに取り組むこともある。
それが空気投げの仕組みを理解するのに役立つ可能性があるからだ。

DVD『空気投げの極意』にも少し収録しているが、姿勢、体幹部と腕の距離など技の練習以前にやることは山ほどある。
一口に姿勢と行っても背筋を伸ばして立つといった単純なイメージではなく、具体的にどういう姿勢がいいのか理解して、実際にその姿勢を取れるようにトレーニングする必要がある。

これらに並行して取り組みながら空気投げの研究を続けている。
これまでの成果はDVDにまとめた通り、手順と仕組みは説明できるようになった。
『隅落』の仕組みを元にした応用にも少し触れている。
技の完成度をあげるためのトレーニングには引き続き取り組むとして、次のテーマに進みたいと思う。
と言っても空気投げのためのテーマだ。
それは『空気投げの仕組みから他の投げ技を紐解く』というもの。

空気投げの仕組みには、投げ技の根本原理が凝縮されている。
空気投げを軸にして、他の投げ技を紐解いてあらためて技の仕組みを整理してみたい。

なかでも『小内刈』と『支釣込足』はそれぞれ後ろ方向への空気投げ『浪落』と斜め前方向への『渦落』に近いと考えているが、それもあらためて検証してみたい。

足技の研究については三船十段の映像と著書も参考にするが、そこにこだわりすぎないようにしたい。
三船十段は空気投げの前に足技を修得されているので、必ずしも空気投げの仕組みから紐解くのに相応しいとは限らないのと、三船十段以外にも足技を得意とする柔道家がいるのでその先生方の技も研究してみたいからである。

次の記事では軸とする空気投げの仕組みをまず整理する。
これによって、各足技と空気投げの同じところ、違うところを出来る限りの明確にしていきたい。






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