松聲館の技法レポート『甲野先生も屋根から落ちる』

この日は撮影用に持ってきたビデオのバッテリー残量が10分、予備のバッテリーが空っぽという事態。
いつも撮影している時間と比較してもギリギリ持つかどうかだったが何とか撮りきれた。

少し前、甲野先生がTwitterで、台風15号の風で庭の木が折れてしまい、先生自ら自宅の屋根に登り、片足を屋根にもう片方の足を太い枝に置いて、チェーンソーで枝を切っていたところ、足場にしていた枝が突然動いて、先生が約3m下の地面に向かって落下したという話をツイートしていた。
結論から言うと先生は無事だったのだが、その時の体の反応が甲野先生自身、たいへん興味深かったようでこの日の撮影では実際に折れた木の幹、足場にしていた枝、咄嗟に掴んだ枝、枝切りに使ったチェーンソーを道場に持ち込んで当時の様子を詳細に語ってくれた。

あらためて大怪我を寸前で回避した話を聞いた私の感想は、『もう屋根に上らないで欲しい。』です(笑)
聞くだけでハラハラしていまいます。

落ちたときの様子をチェーンソーを持って語る先生の動画は、夜間飛行から発行中のメルマガ『風の先 風の跡』に掲載予定です。

写真だけ先行公開!


九死に一生を得たあと、先日ペティーナイフを落としてあっさり深手を負ったという足の指は『踏まれなければ大丈夫(踏まれたらダメ)』というところまで回復されていた。
という訳で足指を踏まないようにしながらも遠慮なく『響きを通す』『影観法』『完全武装解除』『腕伎技』を受けてきました。

『響きを通す』
払えない手の形。これは腕に体幹部の力を伝えて、相手に触れた瞬間に大きな力を伝える技だが、払えない手の形であれば触れた瞬間を吸収するように受けるとこちらは影響を受けにくくなる。
ビリヤードの球を粘土の球で受けるような感じ。
先生にも言われたがこの技では私は崩されなくなっている。

『影観法』
払えない手の形。最終的な動作とは別の動作をする意識で動くことで、受け手は気配を読みにくくなる。
やる側も止められるかもしれないという心の動きが無くなり、自分の意思とは別の自分が動いているような感覚になる。
最近は別の動作ではなく同じ動作を意識するようにされている。
この場合、受け手は気配が出っぱなしできっかけが掴めなくなっているのか、くると思った時に来ないので予測を外されてしまうのかのどちらかだと思う。
通常感じられる動こうとする気配を追うと止めるのが難しいので、この日は影観法をやろうとする独特の気配を探って対応したところ、今までにない反応でしばしば間に合うようになってきた。
この話を先生にしたところなるほどと思うところがあったようだ。

『完全武装解除』
浪之下の形で受けた。やるぞと言う気持ちを無くして動く(完全に武装を解除して動く)ことで、受け手は相手の力の方向を読み取れなくなり崩されてしまう。
やるぞという気持ちが無いせいか、こちらが受け止めたと思っても継続して重さがかかり続けるので結局潰されてしまう。

『腕伎技』
肘の内側の先端を意識することで体幹部の力を腕に伝えて動く技。
相手の手を払う際等に『火焔の手の内』と合わせて用いると強力に払いながら相手の懐に入ることが出来る。

『屋根から落ちる技』
ふと先生が屋根から落ちた状態ときの状態で突きを放った。
この気配がこちらには全く伝わってこない。
以前にも「おっと危ない」とそれどころではない状況を作り出して、
気配を消す突きはあったが今回の突きはそれとも違う。
状況を作り出す気配も感じないので、全く反応出来ない。


以下はTwitterへの投稿です。

甲野先生のメルマガ動画撮影の話。『甲野先生も屋根から落ちる』。先日の台風で折れた庭木の後始末で屋根に登りチェーンソーで枝を切っていて落下した話を収録した。技でもなんでもない再現動画のはずが稽古終盤で技になったのには驚いた。

再現動画を撮ったこともあって稽古は時間こそ短めだったが私も自身の変化を確められる稽古になった。私の変化は今までの稽古の積み重ね。大きなきっかけは山口潤先生の鱗、そこから空気投げ、柔道、剣術、空手の練習を通じて身に付いたもの。この日は甲野先生の気配に集中して受けた。

払えない突きで気配を探る。『響きを通す』は来るとわかっていれば止められる。『影観法』は気配と違う動きが来るので難しかったが、『影観法』をやろうとする気配を探るとかなり対応出来るようになってきた。すると先生は屋根から落ちた時の状態!で突いてきた。これには全く反応できない。

甲野先生
その後、関西での講座・講習会で、この突きをいろいろ検討中です。これは、いじめ問題の根本的対応法に繋がるだけに人間の持つ「業」に深く関わっていて、技としての確立は大変困難ですが、研究のしがいがあります。

ありがとうございました。また受けるのが楽しみです!

近い形で単に『おっと危ない!』という状況を想定した突きの場合は、『おっと危ない!』を想定したときの気配が出るのでそこをおさえに行くと間に合ってくる。先生自身覚えていないという『屋根から落ちる』状況の突きは気配の変かが感じられない。

浪之下の形で受けた『完全武装解除』も気配のなさでは通じるものがあるがこちらは状態が継続する。先生が動くのに反応して止めようとしても、先生はやろうとする気がないまま動き続けるので動きの方向が読めず止めきれない。

わかっていても止められないのはもう1つ。『腕伎技(かいなぎわざ)』だ。これは相手の腕を払って懐に入るのに『火焔の手の内』と組み合わせると強力に作用する。竹刀の斬り落としも止められない。『屋根から落ちる』と腕伎技の組み合わせか、真上から重りが乗ってくるよう。

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