甲野先生のメルマガ動画撮影。入浴中に気づいたという剣術。打ち合う相手の剣をすり抜ける『影抜き』がかつてない早さで自分でも驚きの表情を浮かべているのがわかるくらい驚いた。先生の説明であらためて気づいたが『虚』をつかれて驚いているようだ。先生が『嬰児の戯れ』と表現する脱力がその鍵か。
まだ成功率は低いが、剣を打ち合いを潰すのにもこの脱力が強力にきく。人は無意識かつ繊細に相手を感じ取り、予測に基づいて動いているが、この斬り割りでは一瞬相手を無意識に見失うような感覚になるのか、虚にさせられたところに間髪いれずに強力な働きが伝わってくるので余計に効くようだ。
以前、「影観法」や「突きの輪熊」の技法でやっていた気配の無い突きが変わった。突く方の手は全くやる気がない感覚のまま動く。これを剣でやられるとまた一層気配が感じられず、こちらが反応できないまま好きなように制されてしまう。先生の説明が『やる気のないままやる』なので手がかりがない。
これを柔道の組手争いの形でやると、軽く腕を払おうと触れた瞬間後ろに崩される。大内刈が得意なら簡単にやられそう。謙譲の美徳にも通じるところがあるようで、やる気がないと表現する脱力が相手に譲る形で作用して虚を作り、そこに体幹のエネルギーが伝わるので効くのではないかという。
鹿島神流の構えから来る気配は全く異なる雰囲気になる。気圧されるという言葉を実感できる構え。じりじりと近づかれると、こちらはその分下がりたくなる。構えが前重心なので間合いが近くなるのもあるが、単純な距離ではない圧力を感じる。同じ姿勢でも受け手の反応が全く変わる。実に面白い。
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