最近、本を読むのが以前よりも明らかに遅くなっていることに気づいていた。
「難しい本を選ぶようになったからだろう」
「年齢的に処理速度が落ちたのかもしれない」
そう自分に言い聞かせて、どこかで納得していた。
しかし、どうやら本質はそこではなかったようだ。
原因は、「読み方」そのものだった。
いつの間にか私は、目で文字を追い、頭で意味を処理するという、いわば“追跡型”の読み方をしていた。
この方法では、文を読み終えるまで次の文に移れず、結果的に全体のスピードが落ちる。
思い出したのは、昔自然に行っていた“受信型”の読み方。
目に入ってきた文字が、そのまま意味として立ち上がってくる。前の文を理解しながら、同時に次の文が視野に入ってくる。
この感覚が最近、ふと戻ってきた。
きっかけは武術の稽古だった。
相手の動きを追うのではなく、「受け取る」ことで変化に反応するという稽古を重ねていた中で、どうやら読むという行為にも影響があったらしい。
読むことは、本質的には「目で追う」ことではなく、「受け取る」ことなのだと実感した。
思いがけないところで、武術の学びが読書にもつながった。
読むとは何か、自分にとって深く問い直す良い機会になった。
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