『たい散歩(後編) ~立川 錬成館~ 』

『たい散歩(後編)』

道場で稽古の様子をしばらく見学していると、『DVDを見てみますか?』と、
先生がポータブルDVDプレイヤーを出してきた。
DVDの映像には太極拳の演舞の様子が撮されていた。
『推手(スイシュ)』という動きの演舞だった。
2人で手を合わせて立ち、(見た目には)その手を押したり引いたりする動きだ(他にも色々あるらしい)。

(太極拳って一人でゆっくり動くものじゃないの?)

私の持っていた太極拳のイメージとは違う。
ちなみにこのDVDの映像は貴重な場面らしく、演舞しているのは中国の何とかという70歳くらいの先生で、
何でも日本に”本物の”太極拳を披露した初めての人だという事だった。
何とか式太極拳の何とか先生だと説明を受けたのだけれど、見事に覚えていない。
”呉式(ゴシキ)”とか言っていたような、、、やっぱり忘れた。

DVDにはさらに驚く映像が撮されていた。
推手の演舞中、一方の人が何度も後ろに吹っ飛ばされているのだ。

「これが武術としての本来の太極拳です。ここではこのような動きを体現できるよう練習しています。」

てっきり健康体操のようなものをやっているイメージで見学にきた私には驚きだった。
先生はこの後も太極拳について超初心者の私にとても丁寧に説明してくれた。

4文字熟語の教えがたくさんあって、たくさん教えて頂いた。
悲しい事にほとんど忘れてしまったが、初めに教えていただいて、
唯一覚えているのが「上虚下実(じょうきょかじつ)」。
上半身を楽にして下半身がしっかりとしてる状態が大事だという教え。
太極拳ではこの「虚」と「実」をはっきりさせるのが特徴なのだそうだ。
他にも色々教えてもらったが、リラックスして真っ直ぐでいる為の教えだったと思う。

頭から吊り下げられているように身体を真っ直ぐにし、
胸を下げ、背中を落とし、肩、肘を落とし、お腹を膨らませて、「気」を下げる。
太極拳ではこの「気」を下にさげた状態を基本とする。
やってみるとわかるが、この状態を意識すると下半身がしっかりする代わりに動きにくくなる。
そこで、このしっかりしているけど動きにくい状態のまま動けるようにする鍛錬が、
あのゆっくりとした動きなのだそうな。
踊りのようなゆっくりとしたあの動きは「套路(とうろ)」と呼び、
上虚下実の状態のまま、さらに左右の虚実をはっきりさせながら動く鍛錬だそうだ。

(あの動きにはそんな意味があったのか!)

単なる健康体操とは大きな誤解であった(但し、そういう面を押し出してレッスンをしている所もあるので一概に間違えとも言い切れないらしい)。

実際に上虚下実がどのようものかも体験することが出来た。
相手に手で肩を「ぐっ」と押された状態で、押されている肩ごと身体を回転させる。

普通に回転するのでは、押している方は身体が崩れることなく手が移動するだけだが、
受け手が上虚下実の状態で行うと、押し手と一体化し相手の身体ごと回ることが出来るのだ。

まったく好奇心で散歩に出て、何かあればちょこっと見学のつもりが、
貴重な体験をすることが出来て、ほんとに良かった。
『たい散歩』大成功である。

いやー、面白かった!!


おわり



<<おまけ>>
実は途中で、
「一緒に混ざってやってみますか?」
と言われ、ちょっと見学のつもりだったがスーツ姿で「套路(とうろ)」を教えてもらった。
八式という入門編の套路のうち、3つの動き。
・体重は常にどちらか一方の足にかける。
・中間重心はほとんどとらない。
・左右の虚実をはっきりさせる。

ここでも個人的に嬉しかったのは、鍛錬で膝を壊さないように重心移動する方法を教えてもらえた事である。
秘密は股関節!!


<<おまけ(動画)>>
単純にこんなイメージだったのだけれど、
「套路」
http://www.youtube.com/watch?v=AUx2-io1vCA&feature=related

こういう事が出来るようになる鍛錬だった。
「推手」
http://www.youtube.com/watch?v=QD5ppII_vb8&feature=related

そうそう、太極拳で横方向にばかり飛ばされているのは相手がケガをしないようにする為らしい。
上下方向に飛ばすと着地や床への衝撃を受けてしまうからだそうだ。

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