松聲館の今を稽古する)2022年稽古納め

甲野先生の恵比寿稽古会は2022年はこの日がラスト。
動作術の中島章夫先生が主催するこの稽古会は、甲野先生の最新の術理を体験出来てその説明を聞いてもよし、先生の技をヒントにして周りで参加者同士で稽古をするのも良しという松聲館スタイルの稽古会。

常連さん含めて様々なジャンルの方々が集まるこの会はいつも刺激がいっぱいです。

柔道有段者で先日研究稽古をしたNさんと柔道技の研究をしようかと思って参加したところ、予想外にたくさんの方々と稽古する会になった。

遠方から来られたKさんと会話が弾みあれこれと稽古をして、さらにいつものように他のかたと練習していると甲野先生から声がかかり初参加?の方々に謙譲の美徳を体験してもらうことになった。
常連の方からの質問にも答えているうちに普段よりも少し踏み込んだ説明になった。
謙譲の美徳は相手にその場を譲るつもりで押すと相手が譲ってくれると説明していて、発見のきっかけの通りで説明に間違いはないのだけれど、この意識を持って動く目的は相手に寄りかかって押してしまうのを避けるためなので、丈夫な姿勢で軸を立てたまま押す動作が自然に出来るようになるとこの譲るという意識はいらなくなる。

また、謙譲の美徳はどんな姿勢でも発揮出来るが相手にも慣性の法則が働きその場で居続けようとする力が働くので、自分がその場にいたまま相手を押す場合は落下を使うし、動いてもいいなら歩きながら触れたほうが大きなエネルギーが生まれる。
さらに両足に相手を押したときに生じる抵抗がアースされる姿勢を保てるとかなり強い力で押しても自分が押し負けずに相手に強い力を伝えられるようになる。


とても興味をもってもらえたので稽古中の動きで常に求められるといってもいい脱力について、その効果を体験してもらうために腕相撲の形で負けたところからひっくり返す宴会芸をやりながら説明した。
これは月刊秘伝でも連載されている八光流の広沢先生にその昔宴会芸として教わったもの。
脱力の説明に便利で説得力もあるので今でも使わせてもらっている。
手のひらのみ力をこめて手首、肘、肩をぶらぶらにしたまま動くと相手は抵抗のきっかけを与えられないので止める反応が起きないまま返される。


もう少し説明すると腕力に対して備えている受けは体を固めているので腕を含む丸太のような状態になっている。それをこちらは横から押すのではなく、丸太を転がすように動くので小さな力でも受けによっては体ごとひっくり返る。


やってみるとわかるがやる側が途中で腕力を発揮してしまうと相手が反応して止まってしまう。脱力したまま動けるかがポイント。
今回は段階的な練習方法までお伝えした。この感覚がわかると余計な力みに気づきやすくなるのでおすすめ。


先日柔道研究稽古をしたNさんが早速柔道練習で一本背負と浮腰が決まりまくったという話をしてくれた。受けてみると、先日確認した入り方をすると不十分とも思える組手の状態から一気に持っていかれる。これは私も試してみたい。これは私にとっては衝撃的だった。


私は乱取り中、不十分な状態から技に行くのが怖くてなかなか技を仕掛けられないことが多いが、その感覚が未熟なので実は十分に技に入れる余地があったり、相手が思ったよりも十分じゃなかったりすることに気づけていないのだと気づかされた。早く柔道を練習したい。


2022年甲野先生のセミナーは最後。
先生には一年間貴重な体験をさせていただいて感謝してもしきれない。これは稽古仲間の皆さんにも言えることで私が稽古を楽しめるのも先生と皆さんのおかげです。稽古で受けた恩は稽古で返したいので、上達できた分は何かしら還元していきたいものです。



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