今度こそ『空気投げ』

『空気投げ』が今度こそ(なん回目だ)本物に近づいた。

Sさんを交えた『空気投げ』の研究稽古は、最近は特に稽古すれば何かしら進展がある状態だ。
こういうときはまとめて稽古しておきたい。


この日もやはり進展があった。

Sさんも私も三船十段の映像を見直してきていて、それぞれ気がついたテーマを持ち寄る形となった。

Sさんは受けの状態が現代柔道とは違うのではないかという仮説。
両足ともにふわふわと浮かせるような受けはこの映像ではよく見るが、現代柔道では見かけない。
この受けの効果で飛んでいるのではないかという仮説だった。
となると問題は、受けが自らふわふわと受けているのか、三船十段の崩しによりふわふわさせられているのかという点だ。
前者だとしたらこれは厄介だ。まさか相手がふわふわとしてくれるまで待っているわけにもいかない。
しかし一方、後者だとすると技を施す側もふわふわする必要があるはずだが、少なくとも映像を見るかぎり、
技を施す時の三船十段はどちらかと言えばしっかりとしている。
別の切り口で検討する必要がありそうだ。


私が持ち込んだテーマは、三船十段の著書にある解説で、右足を回し寄せて相手を引き出す動きは、
相手に反射を起こす誘いをかけるやり方ではないかと仮定して、
どのように誘いをかければよいのかを検証してみようと言うものだった。


反射が起こって、右隅方向に抵抗されればそのままその動きをもらって『空気投げ』の技を施すことができる。
しかし、特に自護体に構えた相手を投げられるほど、狙い通りに反射を起こすのは容易ではないようだった。
固めることは出来ても反射で戻るような反応を引き出すことは大変難しい。


投裏の形である『支釣込足を隅落』をやってみるが、想定通り、はじめの崩しを省略できる形になるが、反射を起こさせるヒントはなかった。

「映像を見ましょう。」

手詰まり感が出たところでSさんが提案してくれた。幸いお手本の映像があるのだ。
スマホの小さな画面で映像を確認すると、我々が練習している形とは異なるやり方で動いている部分が見えてきた。


左足を前に踏み出すのではなく、右足を後ろに大きく開いている。
重心の位置もかなり低い。
大きく違っていたのは右引き手の位置だが、映像では体の影に隠れてほとんど見えないのだが、コマ送りで再生していると、右手が相手の体の外側ではなく、内側にあるのが見えた。


他にも映像では見えない部分があったが、これまでやってきた理解で補完しながら実際にやってみると、これは飛ぶぞ!ということになった。
お互い持ち寄ったテーマに立ち返ってみても、解決できているようだった。
相手はふわふわとした受けではなく、自護体でしっかりと構えていても、崩しから投げにはいるところで、両足が動く。
反射が起きているかはわからないが、はじめから投げの方向に崩すのではなく、三船十段の説明の通りに崩し投げる事が出来る。


板張りの道場なので加減して動いているはずだが、ある程度の速度でSさんに受けてもらったとき、投げの途中でふわりと軽くなる感触があった。

飛んだ。

相手がまだ目の前にいるのに重さが消えていくという感触はこれまで『空気投げ』をやっていて初めてのことだ。

かけてもらってもわかったが、これは飛ぶ。
予想していた上半身から後ろに仰け反るように飛ぶ飛びかたとは違っていて、腰の辺りを斜め前下から発せられるエネルギーに飛ばされるような感触だった。


崩しでは左引き手も重要で、これまでの形では下方向に落とすのみだったが、一度あげておいて落とすように動かす事で、相手の崩しを加速させる働きがうまれるようだった。
右引き手は崩しの段階ではなるべく体幹部の近くに置き、重心移動が相手に伝わるようにしておく。
崩しから投げに入るタイミングはこれまで確認したタイミングで問題ない。
投げでは、左引き手は重力方向に落としてやる必要がある。
重心移動と右引き手は、三船十段の『エア空気投げ』写真の形に向かって動かす。


これを一人でやってみるとどうも空手の突き受けの動きをしているようにも思えてくる。
このあたり、明日の稽古で空手家のOさんからヒントがもらえるかもしれない。

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