手裏剣稽古(前編)『挙げて下げる』

Oさんのご厚意でお貸しいただいている人形町の稽古場で手裏剣を稽古した。
そのOさんは忘年会で埼玉県某所へ行ってしまったが、Oさんが形状の異なる手裏剣を数種類用意してくださったと言うので、試し打ちを楽しみにしていた。


手裏剣の種類が一気に増えた。
従来の甲野式小型、一回り大きい前重心のもの、小型コンクリート針、一回り大きい細型、細長い鉛筆型にそれから千枚通し。
それぞれ打つ感触を確かめていった。


中でも千枚通しは特別で、距離特性がはっきりしている。
極端な前重心のため、一間以内の距離ならならかなり適当に打っても刺さる。
それ以上の距離になると下を向いてしまい途端に刺すのが困難になる。


打ち比べてみると、慣れのせいもあると思うが甲野式の打ちやすさは抜きん出ている。
コンクリート針と細い小型は距離を出しにくいがしっかり刺さり、手の内に完全に隠れるので暗器としての性能は高い。
大きめの前重心のものは、三間の距離に剣の性能がフィットしていて、余計なことをしなければ三間がきれいに刺さる。短い距離ではやや調整が必要なように感じた。
面白かったのは細長い鉛筆型だった。
この中で一番回転しやすく、刺さりにくい。
回転しやすいというのは、手首の不要なスナップが出やすいと言うこと。
スナップは直打法には不要と考えている動きで、これが出ると首落ちが早まってしまい刺さらない。
直打法の感覚ができているか確認するには適していて、初心者が始めの練習から使うには厳しいように感じた。
これは私が甲野式の性能のよい剣に慣れているせいもあるかもしれない。


小型のコンクリート針を打っているとその軽さのため、肘に負担を感じることがある。
例えるならピンポン玉をゴルフボールと同じような感覚で遠くへ飛ばそうと全力投球したときの空振り感覚というか、腕の振りを道具が受け止めてくれないので、こちらに返ってきてしまう感じがする。


これに違和感が生じたので手裏剣なしで手を挙げ下げすると当たり前だが肘に負担はこない。
"手裏剣を打つ"
を、
"手裏剣をもって手を挙げて、下げる"
に変えて試すことにした。


手にした手裏剣の形状や重さが変わっても、それを感じて、ただ手を挙げて、下げる。
面白いように形状に関係なく剣が刺さる。


手のひらで重さを感じて打つ感覚がこの助けになってくれる。
距離にもよるが、この感覚があるとボールを投げるときに必要なテイクバックも手首のスナップもいらない。
背を向けたまま打つ『背面打ち』や寝たまま打つ『寝打ち』をやるにもこの感覚が必要だ。



この日は途中から韓氏意拳の内田秀樹さんが来てくださった。
Uさんからは手裏剣のテクニックではない、もっと根本のところを教えていただいた。
それは、『形』と『集注』について。



手裏剣稽古(後編)に続く。

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